6/21/2017

2017明治安田生命J1リーグ 第15節 C大阪 1vs1 清水 #cerezo #photo #diary


俺は、小林伸二監督のことを「日本サッカー界のホー・チ・ミン」と呼んでいる。サッカーに情熱を傾け、限られた手駒の中で最善を尽くして、現実と自らの理想との距離を1ミリでも近づけようとする「執念」。それは、大国アメリカを敵に回しながら、徹底抗戦でそれを跳ね返し、権力を手にすることより、自らの理想を具現化することにその身を捧げた偉大なる「ホーおじさん」の姿と重なる。

巨大戦力と優秀な指揮官を得たセレッソも、「ホーおじさん」から奇襲を喰らい、危うく星を落とすところだった。

スターティングラインナップ


GK、キム・ジンヒョン。DF、右から松田陸、マテイ・ヨニッチ、山下達也、丸橋祐介。MF、ボランチに出場停止のソウザに代わって木本恭生と山口蛍、二列目右にはケガで離脱中の清武弘嗣に代わって水沼宏太、左に柿谷曜一朗、トップ下に山村。FW、ワントップに杉本健勇。

リザーブ、丹野研太、田中裕介、藤本康太、関口訓充、福満隆貴、澤上竜二。

鄭大世の存在感


前半は鄭大世対セレッソ、という図式だった。開始早々にゴールを奪われたのも痛かったが、それ以外の場面でも、強靭なフィジカルと、数々の修羅場を潜り抜けてきた経験を併せ持つ33歳のストライカーは輝きを放ち続けた。


とにかく、よく走り、よく戦い、チームを鼓舞するのだ。中盤であれ、自陣深くであれ、どうしてそこにいる?と驚くような運動量で顔を出す。そして、あのマッチョな体をいからせながら競り合いをするのだ。たまったもんじゃない。

もしセレッソにソウザがいれば、ヨニッチ、ソウザ、山村の3人が彼を抑えたろう。けれど、この試合ソウザはいなかった。代役として先発した木本も素晴らしいプレーヤーだけれども、わずかばかり力が足りなかった。


対するセレッソは最終列のヨニッチ、トップ下の山村がボールをホールドし、全体のリズムを整えようとする。だがその間、ボランチの位置にボールが入らず、入ったとしてもタメが作れないので攻撃のバリエーションが激減していた。散発的に右サイドの水沼から杉本、左サイドから柿谷が侵入するが、もう一歩ゴールに近づければというところで弾き返されてしまう。


セレッソと清水は、順位こそ違うが似たようなサッカーをしていた。特に守備組織の徹底に関しては鏡合わせのようだった。リードを奪えばシッカリ守る。セレッソが他のチームを苦しめてきたやり方に、セレッソが苦しめられることとなってしまった。支配率は上回っていたかもしれないし、パスの成功率も悪くはなかったろう。けれど、決定的な場面の数は限られていて、その限られたチャンスもフイにしてしまった。


チャンスがフイになった時、俺たちは思わず「健勇!」「曜一朗!」とシューターの名を叫んでしまう。けれど、彼らだけが悪いわけじゃない。相手キーパー(六反勇治)が当たっていた、ということもあるし、シューターがいい体勢でシュートを放てるような組み立てができなかった、ということもある。つまり、チーム全体が良くない状態だった。

木本のケガと山村のポジションチェンジ、そして清武


前半終了間際に、木本がヒザを負傷する。ちょうど目の前で傷んでいたのでよく観察したが、あのまま後半を戦うのは微妙な感じだった。やれと言われればやったろうが、100%の状態では戦えないだろう。そういう状態だった。


このアクシデントもあって、後半頭からは清武がピッチに投入された。ボランチには山口と山村、2列目右から水沼、清武、柿谷、トップに杉本という形。


清武はセンスの良さと行動範囲の広さ、的確なボールタッチとパスワークで組み立てを担う。山村がトップにいないので、高い位置でボールをホールドすることができなかったが、清水が徹底して守りきる、という選択をして自陣に引きこもったこともあって、支配率はガンガン上がっていった。シュートも増えてはいたが、手数がかかったり守備に引っかかったりで、スコアは0-1のまま動かなかった。

3-4-3へのシステム変更。


石橋を叩いて渡るタイプのユン・ジョンファン監督だが、リードされ、決め手に欠けたまま後半30分をむかえればさすがに動く。松田を下げて藤本を投入、最終列は右から藤本、ヨニッチ、山下、中盤は右から水沼、清武、山口、丸橋とし、3トップとして右から山村、柿谷、杉本を並べた。


3トップの中央が、上背のない柿谷というのが興味深かった。シンプルに力押しでいくなら、空中戦に強い山村が中央の方がいい。けれど実際は、杉本か山村が競って柿谷に落とす、というやり方を選択したのだ。ユン監督は「ボックス内でボールを持った時、柿谷が最もうまい」と考えているんだろう。1点ビハインドで、とにかく同点に追いつかなきゃいけない場面でも、そんな考えが頭をぐるぐる回っていた。失礼。

惜しいシュートも枠外、頭を抱える山下。

後半も残り5分となると、清水はより割り切った戦い方をする。こういう時、足の速い選手を1人だけ残し、クリアしたボールを追わせるチームもあるが、この試合の清水は全員で守る決断をした。セレッソはこれに合わせ、上背のある連中全員を清水ゴール前に集中させた。丸橋、水沼が早いタイミングでクロスを上げ、ゴール前では何度も競り合いが続く、狭いペナルティーエリアの中に15人くらいの選手がひしめき合う混戦の中、試合終了間際に清水の選手がファウル(ハンド?)の判定を喰らい、セレッソにPKが与えられた。

後で映像を見たけれど、本当に微妙だった。俺が清水のサポーターなら「あり得ない」と抗議するような判定だけども、これもサッカーだ。清武が冷静に決めて同点となり、1分後に試合が終わった。

逆転のため、急いでボールを戻す清武。勝利への執念。

2日経った今でも、運がよかったのか悪かったのか、ハッキリとはわからない。ただ、あれだけ引きこもって守っていた相手から1点を奪えたのは(たとえそれがPKであれ)いいことだ。4-2-3-1から3-4-3へのシステム変更も、選手たちのやり取りを見ていると行き当たりばったりの策ではなく、練習でも試したオプションのようだったし、悪くはない。

そもそも去年J2で4位だったチームが、J1で2位にいるという事自体、驚異的なんだ。それを幸せと感じ、おごることなく高みを目指そう。今日の天皇杯でも主力が出るというし、サポーターとしては毎日が楽しい。


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