5/15/2017

2017明治安田生命J1リーグ 第11節 C大阪 5vs2 広島 #cerezo #photo #diary


今年のセレッソはどんどん伸びる。特定の戦術にハマって負けてもそれをいい意味で反省して、修正して、何かしらの打開策を考えてくる。昨日の試合を振り返るためには、第2節の浦和戦と、YBCルヴァンカップ第4節の広島戦を観ておく必要がある。広島、浦和が採用している3-4-2-1を、ユン・ジョンファン監督がどう打開しようとしたか。その伏線がはられているから。


スターティングラインナップ


GK、キム・ジンヒョン。DF、右から松田陸、マテイ・ヨニッチ、山下達也、丸橋祐介。MF、ボランチにソウザと山口蛍、二列目右に清武弘嗣、左に柿谷曜一朗、トップ下に山村和也。FW、ワントップに杉本健勇。

リザーブ、丹野研太、茂庭照幸、田中裕介、関口訓充、木本恭生、福満隆貴、リカルド・サントス。

3-4-2-1を打破するために


広島、浦和の3-4-2-1は、もう説明がいらないくらい皆が知っているシステムだけれど、もう一度おさらいしよう。


3-4-2-1は守備時の布陣で、どっちかというと5-4-1と言ったほうが近いかもしれない。4-4-2より最終ラインが一枚多いことで守備の安定が図れる。

攻撃時にはこれが4-1-2-3に様変わりする。ダブルボランチのうち一枚(昨日なら森﨑和幸)が3バックの真ん中(千葉和彦)の隣まで落ちて、両サイドのストッパー(塩谷司と水本裕貴)はサイドバックのように位置取りする。これが「4」。

真ん中には青山敏弘が残って「1」、アンデルソン・ロペスと柴﨑晃誠は中に絞って位置取りして「2」、右サイドのミキッチ、左サイドの柏好文は1トップの工藤壮人の位置まで上がる、これが「3」。

こうすると4バックのチームでも3バックのチームでも、どこかしらに「誰がマークすればいいのかわからない選手」が生まれ、そこを切っ掛けにして攻略することができる。浦和ペトロヴィッチ監督が取り入れ、森保一監督が成熟させた広島、浦和の代名詞的なシステムだ。


セレッソはリーグ戦第2節の浦和戦でいいところなく負けた。まだ実戦慣れしていないチームでは、選手の位置取りが目まぐるしく変わる3-4-2-1に対抗できなかった。

YBCルヴァンカップ第4節の広島戦では後半9分に秋山大地がゴールを決めると、テストパターンとして5-4-1で守備ブロックを作った。両サイドに張り出すウイングを捕まえるために最終ラインの数を増やした。これは受け身になるという弊害を残しながらも、ある程度機能した。

昨日の試合では、これに加えて攻守にもう一つずつ仕事を増やした。守備では2トップの杉本、山村が青山に入るボールを制限する。攻撃では手数をかけず、とにかく速攻を仕掛ける。

ハマった「広島対策」


3-4-2-1が4-1-2-3に変わると、必ず青山にボールが入り、そこから攻撃が展開される。その流れを止めるためには青山をマークするか、青山に入るボールを制限させるかしかない。セレッソは4-4-2のゾーンを崩したくないので後者を選択した。山村と杉本は最終ラインの千葉、森﨑和幸と、青山を繋ぐライン上に位置取りしてボールが簡単に入らないようにした。セレッソの走行距離一位が山村だったのは細かな位置取りが必要だった裏返しだ。

これはかなり効いたようで、広島は中央突破をあきらめ、セレッソの左サイドから対角線上、右サイドの柏に対してロングボールを放り込む回数がかなり増えた。松田が何度もマッチアップして難儀したし、一度は守備をぶち抜かれて失点したけれども、青山というゲームメーカーを抑えたことでイニシアチブが取れたのは間違いない。

ゴールを決めた杉本。ソウザとガッチリ抱擁

攻撃では、手数をかけずとにかく速攻。1対1になると積極的に勝負を仕掛けていた。3-4-2-1から4-1-2-3へ、また4-1-2-3から3-4-2-1へ、広島は攻守が入れ替わるたびにシステム変更を繰り返す。両サイドなどは最前線に張り出したかと思えば最終ラインに戻るわけで、このシステムを採用すると他のチームよりも帰陣するために使う時間がどうしても長くなる。そのため、手数をかけないスピードに乗った攻撃を仕掛けると、広島、浦和の守備陣は後手に回りやすくなる。


昨日は流れの中から3点取れたわけだけれども、山村の突破から杉本、柿谷の崩しから清武、杉本のセンターラインからの独走と、どれもシンプルでスピーディーなものだった。先制点を許しながらもしっかりと攻められたことも評価すべきポイント。

(おそらくは)計算づくの5-4-1


セレッソはリードしていると、終盤必ず5バックに切り替える。大抵の試合は後半30分とかもう少し遅い時間帯だけれども、今回はもっと早くて、後半20分くらいから山村を最終ラインに下げた5-4-1にシフトチェンジした。理由としてはいくつかあるだろうけど、最高気温26℃、湿度41%というコンディションが決め手になったのではと考える。

山村の空中戦。圧倒的な跳躍力。

今年のセレッソはよく走る、スプリント回数や走行距離の上位がセレッソの選手で占められることも少なくない。気温が低い春先ならいいけれど、気温が上がれば、走るサッカーの効果は薄まってしまう。再三攻めていながら広島にワンチャンスをモノにされたこと、「後半は追加点を狙おう」と指示を出したのにミキッチに決められたことは、ユン監督にとって大きなショックだったはずだ。ルヴァンカップで広島相手に5-4-1のシステムが(ある程度)機能していたのもあって、あの時間でのシステムチェンジとなったと見るのが妥当だろう。

終盤にはこの表情

柿谷は涼しげ。チームがリードしていると、キャプテンの顔もほころぶ。

セレッソで一番キツかったのは杉本だった。守っては最終ラインと青山を結ぶライン上を移動し続け、攻めては速攻のためにランを繰り返した。加えて、終盤には疲弊した中での1トップ。2ゴールという結果がなければもっとグッタリしていたろう。

実際ゴールキックになった時は、少しでも休みたいからと、ジンヒョン相手に「もっと時間稼ぎしよう」「足もとでボールをつなごう」とジェスチャーで訴えていた。ジンヒョンがそんなことお構い無しでロングボールを蹴り込んでいたから、バックスタンドの酔客からは「健勇はしんどいねんぞ!」と声がかかった。そんなヤジが笑いを誘うくらいの得点差のまま、試合はタイムアップ。

広島と浦和の力量差


セレッソとししては試した策がある程度ハマり、やりたい事をやりたいようにできた。けれども、それはセレッソのチーム力が上がったのに加えて、今の広島のチーム力が落ちているということも関係している。浦和相手に同じことをしても同じ結果が出るとは思えない。

試合後、うずくまる千葉をねぎらう柿谷

ずっと広島を追いかけているわけではないから、何がどうなって今の状態に落ちてきたのか、明確な答えを出せないでいるけれど、何年も主要メンバーを引き抜かれ続ければ苦しいことは間違いない。

セレッソも海外移籍を容認していたり、どちらかと言えば流出する方のチームだった。ヤンマーが積極的に投資しているおかげで清武を引き戻す資金が得られたけど、あんなのを毎年期待していたらどこかでズッコケる。セレッソにもこういう状態が来るかもしれない。そう覚悟してないと、クラブのサポーターはやっていけないだろう。

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