3/20/2017

2017明治安田生命J1リーグ 第4節 C大阪 1vs0 鳥栖 #cerezo #photo #diary


やっと、4試合目にして「初日」が出た。

アクシデントがあり、自らのミスがあり、相手のミスに助けられ…何度も何度も不安に襲われながらも、3年ぶりのJ1での勝利をこの手につかむことができた。

スターティングラインナップ



システムは4-4-2に限りなく近い4-4-1-1。スターターはGKに丹野研太。DF右から松田陸、山下達也、マテイ・ヨニッチ、丸橋 祐介。MF、ボランチにはソウザと山口蛍。右に清武弘嗣、左に柿谷曜一朗。トップ下(ほぼ2トップの位置)に山村和也が入り、FWは1トップに杉本健勇。

リザーブは圍謙太朗、田中裕介、丸岡満、木本恭生、清原翔平、秋山大地、リカルド・サントス。

人間万事塞翁が馬


「人間万事塞翁が馬」という言葉がある。良いことが起こると悪いことが、悪いことがあるといいことがある、という意味だ。この試合のセレッソにはこのことわざがピタリと当たる。


前半立ち上がり早々、マッチアップしていた鳥栖FW豊田陽平と接触した山下が右足を負傷し、自ら途中交代を申し出た。ユン・ジョンファン監督は木本を呼びスクランブル発進させる。不安を感じさせる立ち上がりだった。


前半7分の時点で交代カードを1枚切るというのは、俺達が感じている以上にダメージが大きい。

交代カードというのはポーカーのそれと同じで「良くない状態から脱するために手札を交換する」行為だ。さらにポーカーと違ってハッタリをきかせることができない(試合の状況はカードのように隠すことはできず、それぞれの眼前にあるのだから)

だから、先にカードを切るなんてことは、できることなら避けたい。先にカードを切れば、相手はその様子を見てカードを切る切らないをチョイスできるからだ。


けれど木本というカードは、みんなが予想していた以上に効果的なものだった。83分、プラス前後半のAT6分間、ほぼノーミスで最終ラインを引き締めていた。鳥栖はついぞこの手札を超えるカードを引くことができなかったのだ。

彼は山下ほどの強さを持ってはいないが、本職がボランチということもあり、攻撃の始点、組み立て役としての能力を多分に活かしていた。今日日はセンターバックであってもパスワークやゲームメイクの能力を求められるが、木本はその要素をキチンと持ち合わせていた。

ミラーゲーム


さて、この試合は1-0という僅差のスコアで決したわけだけれども、このスコアはユン監督、鳥栖マッシモ・フィッカデンティ監督両人のサッカーに対する姿勢がとてもよく出ているように感じた。二人とも守備重視、非常に手堅いサッカーをよしとしていて、バクチを打つことが少ない。木本の投入は僅かに危険をはらんでいたけれども、よい方に転がったので修正の必要がなかった。


セレッソは攻撃時も守備時も4-4-2の3ライン。守備時には杉本と山村、高さ強さのある前線二枚が相手の攻撃の始点(センターバックやボランチ、アンカー)を潰し、両サイドにボールを押し出すとコンパクトな4-4のラインがサイドにスライドしてボールを奪う(なので、バックスタンドでカメラを持っていると選手のドアップがたやすく撮れた。サイドに相手を圧縮している証拠だ)

対する鳥栖のシステムは4-3-2-1。だが長い時間セレッソにボールを持たれると、トップの豊田とトップ下がそれぞれ1つポジションを下げ、セレッソと同じく4-4-2のシステムに変わっていた。豊田と、合流即スタメンのイバルボという二枚の前線は杉本、山村コンビと同じような役割を担っていた。

どちらも4-4-2で対峙する

相手と同じシステムを組めばポジションのミスマッチがなくなり、守備の破綻を防ぎやすくなる。代償として、攻撃の時に相手の組織をブレイクしにくくなるのだが、両監督ともそれは織り込み済みのようで、冒険せず、味方の好プレーや相手のミスをじっと待っているように感じた。


俺は、セレッソをサポートしている人はみな「予想を超える何か」を期待していると思っている。スタンドで試合を観ていると、そうしたサポーターたちからいろいろと小言が飛び、いかにこのサッカーがつまらないかを隣人と話し合っていた。彼らにとって、2012年、2013年に何度も俺達の予想を超えてくれた柿谷が、左サイドで組織の一員として走り回ることは苦痛以外の何物でもなかった。

けれども、ユン監督はこのサッカーを堅持したし、柿谷もそれを受け入れて攻守のリンクマンとして走り回っていた。DAZNのスタッツではスプリント回数も表示されるが、両チーム通じてダントツのトップは柿谷だった。その数39回。2位が丸橋の24回、鳥栖でトップの回数だった福田晃斗が23回だったのと比較すると驚異的な回数だ。セレッソが変わったのだということがこの数字からも見て取れる。


セレッソが躍進する年は必ず守備が安定している。ステージ優勝まであと一歩だった2000年、あと数分耐えればリーグ優勝だった2005年、ACLへの挑戦権を勝ち取った2013年。どの年も堅い守備からのカウンターでゴールを奪い、失点を最小限に抑えて勝ち点を積み上げている。今年、2017年のセレッソからもその「匂い」がすることに少しばかり喜びを感じている。

唯一予想を超えた清武のパス


前段で両陣が「味方の好プレーや相手のミス」待っていると書いたが、これに該当するプレーは後半25分にあった清武のパスだけだった。

コーナーキックからの流れで右サイドにいた清武がフリーでボールを持つ。そのまま打つかと思いきや、左サイドの木本にパス。ヘッドでの折り返しに山村が反応し、この試合唯一のゴールが生まれた。


清武はまだ6億円に敵う働きをしているとは言い難い(この前6億円をつぎ込んだ人間よりはマシだが)柿谷にもないリンクマンとしてのきらめきを少しずつ放ちつつある。勝ち点3ではまだ足りない。あと10本ばかり相手の首を掻き切るようなパスを出してくれないと…。


あくまで「手堅い」ユンサッカー


試合は1-0のまま終幕へと向かっていた。だがもちろん、フィッカデンティ監督は「敵役」のままステージを去るつもりはない。起死回生を狙い、前線の枚数を増やし、守備を第一とした姿勢を崩し始める。

ユン監督の対応策は少年サッカーのような幼稚さで、それでいて効果的だった。

それまで前線で強さ、高さを見せつけていた山村を最終列まで引き戻して3-6-1に(後半30分ごろ)。次に攻撃が持ち味で長駆疾走を続けていた松田を下げ、守備と堅実性が売りの田中を右サイドに(後半32分)。終いには清武まで下げ、秋山を入れて3ボランチに(後半40分)。相手の4-3-3に対し、3枚のセンターバックと3ボランチを組み合わせた。


どれもパッと輝くような秘策ではない。まるで役人がハンコでも突くように、相手がこう出たらこちらはこう動くとマニュアル化されているように、極めてスムーズに用兵を行った。

俺は毎日練習を観ているわけではないが(できればそうしたいけれどもね)選手の身振り手振りを見ている限り、織り込み済みの用兵のようだった。それが何よりも嬉しかった。そうして、試合は13,086人のうち、11,000人程度が待ち望んでいたであろう結果に落ち着いた。

強豪を相手にどこまで通用するか


今後、リーグ戦はホーム横浜FM戦、アウェイ鹿島戦、そしてルヴァンカップの甲府戦を挟んでホームでのダービーと続く。恐らく、これが次の壁になるだろう。どこも、すんなりと勝ち点をよこすようなお優しいクラブではない。

この試合で見せたがむしゃらさ、柔軟さ、がまん強さ、そうしたプロらしくない必死さを出し続けなければ、幸せなゴールデンウィークは来ないだろう。一勝できたと喜んでいれば、次は恐ろしい先輩方の相手とは、頭が痛い。


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