8/31/2014

2014 J1 第22節 C大阪 1vs2 神戸 羊に率いられた狼。 #cerezo #photo

2014年8月30日(土) 19:04キックオフ[ 観客 21,091人 ]

得点者

前半8分 南野 拓実(C大阪)
後半26分 シンプリシオ(神戸)
後半45分+2 森岡 亮太(神戸)


劇的な逆転劇?違う、伏線はあちこちに張り巡らされていた、これは必定の結果だった。

「私のサッカーは全員が機能しないと勝てない」

マルコ・ペッツァイオリは就任時、確かこんなことを言っていたと思う。しかし昨日は彼自身が、ピッチから戦えない選手を下げることをしなかった。そうして語っていたとおり、勝てずじまいになった。


スターターは下記の通り。システムは4-3-1-2で、ボランチはアンカーに扇原貴宏、右に平野甲斐、左に長谷川アーリアジャスール、トップ下に出場停止明けの南野拓実が入り、カカウとディエゴ・フォルランが2トップ。


これは神戸の攻撃を窒息させるためのシステムだった。

神戸はボールを持つと、ボランチのチョン・ウヨンが下がって3バック気味になり、シンプリシオは残る。サイドバックが押し出されるので3-3-2-2のようなスタイルになる。こののディフェンスラインに2トップと南野を当て、ボールの出どころを封じる考えがあった。


これは前半非常に機能した。ここ数試合でやっている「目の前の敵を捕まえておく」というシンプルな考えが選手の動きを軽くしているように見えた。攻撃でもペッツァイオリ体制になって、長らく停滞していたのがウソのように動きが素早い。特にカウンターの起点になった南野の動きは白眉だった。平野のうまい飛び出しからシュート、先制点も素晴らしかった。


このゴール以外にもフォルラン、南野、カカウの前三枚が作る速攻で何度も決定機は作れた。これまでは決定機すらなかなかなかったことを考えると大きな進歩。しかし、決めきれない。もどかしさは募るばかりで、結局その代償は最後に支払うハメになった。


また、前半のプレーで藤本康太が肩を痛めて負傷退場、染谷悠太をスクランブルで投入しなければいけなかったのも痛かった。ペッツァイオリのサッカーは運動量が生命線で、交代カードでも運動量が落ちた選手を入れ替えることが多い。そのカードを前半で1枚切ることになったのも後半の伏線だった。


その後半、徐々に神戸が主導権を握り始める。理由は簡単で、前三枚、特にフォルランの運動量が著しく低下したためだ。攻撃の一歩目を封じる事ができないでいると、後ろの全員がとてつもない負担を受け持つことになる。3ボランチもアンカーの扇原以外は攻撃的な選手で、フィルターとしての役割はあまり期待できない。


こういう時に(その前の段階でももちろん)ブロックを下げて、ペースダウンして、いい意味での「サボり」ができないサッカーはとても厳しい。前からのプレスを90分間続けるのは無理があることで、ペッツァイオリのサッカーでは後半20分からのガス欠はお決まりの出来事になってしまった。

この流れの中で、チームを落ち着かせる存在を投入することには異論はない。後半23分、長谷川が負傷してからの新井場徹という選択も、1-0でクローズしようという意図ならば十分に納得できる。ただ守備が瓦解している根本である前線のテコ入れはなされないままで、流れを大きく変えることはできなかった。


新井場が投入された時間帯には、セレッソが組織的な守備や、そこから意図を持って速攻を仕掛けるといったアクションは起こらなくなっていた。がんばって数人が前からのプレスをかけにいっても、フォルランが動けなくなっていた分簡単に外されるようになった。勝ちに行くなら、最後のカードはこの1-0の時点で切るべきだった。しかし現実には、杉本健勇が投入されたのは同点に追いつかれモチベーションが下がった後で、しかも下がったのはまだいくらか動けたカカウだった。


これでセレッソの勝ち目はかなり薄くなってしまった。それでも選手達は個々に奮闘していたと思う。誰もタクトを振らない、信じられる指示が出ていない中で、ギリギリの戦いを続けていた。それだけに、せめて1-1で終わらせたかった。それならばまだ上を向いて戦い続けられたはずだから。


去年4位に食い込んだチームに、6億円のストライカーと2.5億円のトップ下が来て、16位という現状がある、これはなぜなのか。

いくら素晴らしい個を寄せ集めても、素晴らしい指揮官がいなければ、チームとして明確な哲学がなければ勝てないということではないのか。収入第一、露出第一、企業としては成功かもしれないが、クラブとしては不合格だ。

その収入も陰りの色が出始めている。好天で、夏休み最後の週末だというのに観客は21091人、一見立派な数字ではあるけれど、これまでの動員数から考えれば物足りない。勝つこと、観客に喜びを与えるチームを作ること、その根本を見失っていてはいけないと、気づいてはくれないだろうか。


8/26/2014

マルコ・ペッツァイオリが見つけた「負けない方法」 #cerezo #photo #diary

川崎戦の後半から広島戦を経て、次節は火曜の神戸戦となる。

ここ10試合勝てていないセレッソだけれども、マルコ・ペッツァイオリの中では明確な「負けない方法」が見つかりつつある。


それはこんなシンプルなものだ。
  • 相手のDFラインは、同数か一人少ない人数(3バックは2人、4バックは4人)でプレスをかける
  • 中盤は同数+扇原貴宏の編成を組む
例えば川崎戦の後半はこうだった。


それから広島戦、彼らが4-1-5にするとこんなシステムを組んだ。


相手の前線が不用意にラインを上げられないように仕向け、中盤もシンプルにマンマーク、これだと選手の出足もいい。守備から攻撃にうつる瞬間には扇原がフリーになる確率が高いから、展開を早く進められる。


ハイプレスと扇原の左足から繰り出される正確な長いボールが、ペッツァイオリセレッソの生命線。それを明確に打ち出したかっこうだ。

そうして、今日火曜午後の練習と、木曜日の練習が非公開になった。これは神戸のシステムを考えた上でのアクションだろう。

神戸が今年スタンダードとして取り入れているのは4-4-1-1、または4-2-3-1のシステムだ。これをセレッソの約束事に当てはめるとこんな形になる。


マルコ・ペッツァイオリが当初導入した4-1-2-3こそ、4-2-3-1や4-4-2を取り入れた相手に最も与し易いシステムなのだ。

しかし、このシステムを導入した当初のセレッソは勝てなかった。2分3敗、4-4-2をベースにしている新潟にもアウェーで1-0と辛酸を嘗めた。


だからこそ、神戸戦ではこの4-1-2-3をブラッシュアップし、4-4-2、4-4-1-1を志向するチームに対しても戦えることを再確認させたいのだろう。

この試合に勝てれば、得点を奪えれば、何かが変わると信じよう。土曜日の夜9時まで長い時間があるけれども、そこを超えればまた違った展望が見えてくるはずだ。


アウェー名古屋戦以来のリーグ戦勝利のために。

8/24/2014

2014 J1 第21節 広島 0vs0 C大阪 玄人好み。 #cerezo #photo #diary

2014年8月23日(土) 19:04キックオフ[ 観客 21,102人 ] 曇り

得点者無し


マルコ・ペッツァイオリ監督のサッカーは、見ていてメッセージが伝わりやすいサッカーだ。だからシステムとか戦術とか、そういうのが好きなたぐいの連中には受けがいい。

けれども、人間が行う全ての行為には、机上では想定し得ないようなファインプレーやミスが存在する。だから、ゴールを奪ったり奪われたりという状況が起きる。90分間ノーミスなんてあり得ないのに、それを全うしようとする遊びの無さが、今のセレッソに漂う窒息感の原因だ。


スターターは大きく変わった。システムは4-3-1-2、2トップは合流間もないカカウとディエゴ・フォルラン、その下にケガ明けの平野甲斐。ボランチに右から長谷川アーリアジャスール、アンカーの扇原貴宏、キム・ソンジュン。サイドバックはターンオーバー明けの丸橋祐介と安藤淳。南野拓実は累積警告で出場停止。


なぜこのシステムだったか?答えは川崎戦の後半、怒涛の3得点を呼んだフル・マッチアップの中にある。あの時は3-4-3の3-4に対してフォワード2枚、その下に4人を並べて川崎を押し込んだ。その上で扇原をフリーにしてボールの出どころを確保した。アレを広島でもやろうとしたのだ。


広島は攻撃に入るとダブルボランチの一人が降りて、ストッパーがサイドから上がる。4-1-5のシステムになって素早い攻撃を仕掛ける。

それに対してセレッソの布陣を当てはめると、広島の後ろ半分、各ポジションにピッタリ一人ずつつくのがわかるだろう。こうしてボールの出どころをおさえて攻撃を停滞させること、それがペッツァイオリ監督の狙いだった。


これは見事に成功した。佐藤寿人、青山敏弘という攻撃の核がいないとはいえ、あの広島をシュート3本に押さえ込んだのだから立派な数字だ。「目の前の敵に自由を与えない」というシンプルなタスクは、決め事で一冊マニュアルができるほどの4-1-2-3よりも判断が早く出来る。守備の出足は早く、ハイプレスはよく機能した。


しかしその代償として攻撃は停滞した。このサッカーでは攻撃的なポジションの選手でも守備での貢献が要求される。だから楠神順平ではなく平野甲斐を選び、吉野峻光ではなくキム・ソンジュンがスターターなのだ。90分間守備で動き回れるタフさ、という第一条件を満たさないと試合には出られない。その理屈が残っているから、攻撃でのひらめきや予想外が起きないままなのだ。交代も走り回ってガス欠した選手のパッチとしてのものがあり、攻撃のアクセントを加えるためのそれは試合に一つ程度だ。

後半22分

この試合での点を取りに行く交代は、後半22分の吉野峻光だけだった。残りの二つのうち後半29分の永井龍はカカウの運動量低下によるもので、後半38分の杉本健勇の投入はパワープレーのため。理詰めで、相手を崩しに行くエッセンスとしてカードを切るのが一度きりというのもゴールが遠い一因だ。永井龍は惜しいシーンを作ったけれども、シュートは枠外。決めきれないもどかしさを感じた。



後半28分

後半38分

さて、この試合で書きたいことはおよそ書いた、次の試合のことを書こう。これからの試合では、どれだけペッツァイオリ監督の考える攻守のバランスを崩し、リスクがあっても点をとる、勝ちに行くという姿勢を見せられるかがカギになるだろう。


カカウはフォルランとの連係もそこそこで、しばらく練磨すれば良き相棒になるだろう。しかし全盛期のような爆発的な突破は見られなかったから、この役割は南野や楠神が担うことになる。吉野も含め、彼ら攻撃のセンスを持ち合わせた存在をうまく使っていかなければゴールは生まれない。


例えば昨日の試合、吉野があえてバランスを崩し、予想外のドリブル突破からゴール前に侵入しミドルシュートを放つ、というシーンがあった。ああいう「人の考えの外」の動きが複数人で連鎖しないと「崩す」というシーンは見られない。安定を望まず、チャレンジする事こそ、ゴールを奪うために必要な要素だ。マルコ・ペッツァイオリが賭けに出るタイミングはいつか。もう始めてもよさそうな頃合いだが。


8/21/2014

コケ、大阪はどうだった? #cerezo #kataller #photo #diary

昨日の試合はテレビ中継が無かったのか、せめて空気感だけでも残しておこう。


試合前、岡山から来た桃太郎がきびだんごをくれた。家来にはならなかったけどね、鬼は怖いし。


夏の終わりも近い。



カターレの選手の中に苔口卓也を見た。彼の目には今のセレッソはどう見えたんだろう。


藤本康太と酒本憲幸がそれを見つけて懐かしそうにしていた。


キャプテンは山下達也。



富山は安間監督の考えがそうだからか、考えてプレーをしているように見えた。少なくとも、ガツガツとフィジカルに頼るようなことはなかった。


永井龍に動きの不出来を怒るディエゴ・フォルラン。


後半の円陣でも熱血指導は続いた。


昨日の友は今日の敵。


ベテランになった苔口は、不器用さが消えて、少し余裕があるように見えた。長谷川アーリアジャスールとの競り合いでファウルを食らっても笑ってみせる。



富山とセレッソは旧知の仲が多いようだ。武田博行と、この試合富山のゴールマウスを守った飯田健巳とは栃木SC時代のチームメイト。


スタグルもイベントもない寂しい試合だけれど、天皇杯には天皇杯の良さがある。


最後まで勝ち上がりたいね。

第94回 天皇杯 3回戦 C大阪 1vs0 富山 小さな成功。 #cerezo #kataller #photo #diary

得点者

前半45+2分 藤本 康太

小さな成功でいいと書いたら、本当にそうなった。川崎戦の反省を踏まえて様々なアクションを試みていたけれども、まだまだ試作段階といったところ。


スターターは下の通り。両サイドバックは新井場徹と酒本憲幸、ダブルボランチには扇原貴宏と長谷川アーリアジャスール、前の4枚に変更はなく、並びも同じだった。平野甲斐、キム・ソンジュン、カカウは契約時期の関係で出場できず、阪本将基がベンチに入った。


この試合の富山は3-4-2-1、川崎と同じシステムだった。サイドは2対3と数的不利になる、これをどう打開するかが大事なテーマになった。

まず守備では川崎戦でできずだったコンパクトな2ラインを徹底していた。


対する富山は定石通り長いボールを裏に出して一発を狙うが、精度を欠き要領を得ない。レナトや大久保嘉人のような強烈な個性が無かったことも幸いし、いい形で守れた。


しかし、攻撃では精彩を欠いた。試みていた完璧な1対1のマッチアップがうまくはまらなかったからだ。


セレッソがボールを受けると、扇原貴宏がセンターバックのラインまで降りるか、サイドバックのどちらかが残って3バックになる。前線は楠神順平や南野拓実が前に上がって3トップ気味に。3-4-3のラインに3-4-3でぶつかり、展開力のあるボランチから突破力のあるサイドにボールを流そうとしていた。


恐らく考え方は間違えてはいないのだけれど、狭いサイドに人数がかかってスペースが消え、少しのズレで攻撃が終わってしまうことが多々あった。こういう時はすぐに密集とは逆のサイドにボールを振るなりした方がよかっただろう。陣が整う前に早めにタテへと入れていくのも手だったが、それができていたのはキム・ジンヒョンのロングボール一度きりだった。


押し気味にゲームを支配しながら、拙攻が災いしてゴールはセットプレーからの藤本のゴール1点だったのには理由がある。




後半は焦って前に出ず、バランスをとりながら気をうかがうという難しいタスクが待っていた。守備をしっかりしようとすると攻撃がなおざりになり、ボールロストの不味さが際立ってしまった。


交代策も次の一点を取りに行くのではなく、選手の運動量を見極めてのものが二つと、時間稼ぎのためのものが一つ。ディエゴ・フォルランから吉野峻光、楠神から阪本、最後に永井龍から杉本健勇。

後半18分


交代選手はそれぞれが持ち味を出していた。特に、復活した吉野のボールを落ち着けるプレーはなかなか。阪本にはもう少しボールに絡む機会があればよかったのだけれど。

後半24分


後半40分


ジャイアントキリングが多かった3回戦、まずは勝利できたことを喜ぼう。試合中に様々なアクションを試せたことも。次節、リーグ戦が不幸な事故に見舞われた広島のため、どうなるのかはまだまだ不透明なのだけれど、決められたことをプロとして粛々とこなし、明るい話題をもたらせればと願う。