8/03/2008

スカイ・クロラ

 映画を公開初日に観に行ったのって初めてかな?「スカイ・クロラ」行ってまいりました。

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 以下感想、ネタバレの為たたみます。






 個人的な印象ですが、これ程主人公が無力だった映画もなかったかなと。アメリカのヒーローだったら自分とクサナギ・スイトの運命を理解した後、ティーチャーを撃墜して、オゥ、イェスッ!!ハッピーエンド!!なんでしょうが、そこは押井さんですから、カンナミ・ユーイチはバシッと倒されてしまうんですね。ユーイチは「トゥルーマン・ショー」のジム・キャリーにはなれませんでした。原作ではティーチャーは普通に強いエースだったらしいですが、映画ではRPGに出てくるような「絶対に倒せない敵」のように表現されています(倒せるって監督言ってるけれど無理だよあれは)
 結局自分も、愛する人も、「戦争請負会社」が用意した(らしい)運命から開放することが出来ず、連鎖を解くことが出来なかった。2時間かけてそのお話を観るわけです。少しだけ謎解きっぽいところもありますが、押井さん信者だったら「少ない!薄い!」とブーイングする程度です。得意の長台詞もスイトが少ししゃべったくらいで、押井さんの「くどさ」が味わいたかった人には物足りないかもしれません。
 ただこの映画で成功したな、と思うところがあって、それは件のティーチャーにユーイチが撃墜されるラストシーンなのですが、それが全然悲しくなかったんですよ。
 それって面白く無かったって意味だろ。と思われるかもしれないですが、この戦いに赴くまでの時点で、自分と自分を愛してくれる人、そして周りの事象全てが悲しみに溢れた運命にある事が確定しているのです。それが普通に観ている人にははっきり判る。ティーチャーに撃墜される瞬間は、それはある程度悲劇的ではあります。しかし「撃墜された」ことより「運命を変えられなかった」ことの方が虚しく、辛く思える、そういう映画なんです。
 久しぶりに観た映画ですが、良い意味で期待ハズレだったと思います。ヒコーキモノ、押井モノではなくて、恋愛モノにカテゴライズしたい一本です。「スカイ・クロラ予告編祭り」で庵野秀明、樋口真嗣を押さえ、「GO」や「世界の中心で、愛を叫ぶ」で抗えない運命に苦しみながら、それでも惹かれあう人間を描いた行定勲監督の作品が高評価なのも、そういう理由からかも知れません。夏の映画っていいなぁ。
 そうだ、追記。恋愛モノと言ったのにはもう一つ理由があって、押井さんって感情は抑えてるけれど恋をしている女性、恋をしているのに恋をしていると自分自身気がついていない女性を描くのがすごく上手いんですよ。パトレイバー2の南雲さんとかね(ラストシーンの手錠をかけるシーン、多分世界中の映画の中で最もセクシャルなシーンだろうとおもう)目線や、指の使い方に至る細かい仕草。言葉のちょっとした機微。その有り様がいい。女性から見たスイトがどうかは判りませんが、私の目の前にいたクサナギ・スイトはとても魅力的な女性でした。そこの細かい描写まで含めて、「スカイ・クロラ」は一流の恋愛映画です、ハイ。

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