6/27/2006

発つ神跡を濁す。

 連日時期代表監督問題の記事が躍っている。オシム氏は意外なほどスムースにこのオファーを受けそうな勢いだ。しかし協会側が4年契約を望んでいるところを「結果に満足されない場合も有るでしょう」と2年契約に変えさせようとするあたりは、やっぱりらしいなと思う。スポーツ紙の中には「2年間はオシム監督、その後は愛弟子のストイコビッチ氏か!?」なんて飛ばしているものまで出てきたけれど、きっちりとサインが済むまでは静観しておこう。


 そんな過熱気味の報道の裏で、今日ひっそりとジーコ前代表監督の退任記者会見が行われた。本来ならこれが行われてから次の監督選びが表層化すべきなのだけれど、今回は川淵氏がしたたかだった。

 本来有るべき順序で行くと、今頃ジーコ前監督の責任問題が噴出していたはずだ。不可解な選手選定や起用法、いたるところに疑問符の付く4年間だったから、さぞ熱のこもった会見になったろう。

 そしてジーコ前監督の責任は、彼を(一説には独断で)起用した川淵キャプテン自身の責任でもある。事と次第によっては進退問題に発展しかねない「爆弾」だ。

 しかし川淵キャプテンは、オシム氏の名を「うっかり」口走った事で、この爆弾をこっそりと処分する事に成功してしまった。本当に気の効くうっかりだ。


 そして今日の肝であるジーコ氏の会見。ニュースサイトでは要点しか書かれていなかったので、改めて知っている限り一番長いJ's GOALで確認したのだけれど、実に潔くない会見のように映った。それがブラジル人の、勝利を渇望し続ける人間のありようなのだと言ってしまえばそうなのかもしれないし、地球の裏側から来た人間に日本的な潔白を求める事自体ナンセンスなのかもしれないが、読んでいて去り行く者への別れの悲しみなど消えうせてしまった。

 特に注視したいのは、やはり日本人の体格が脆弱だと述べた部分だろう。

(前略)ワールドカップでもアジア予選でも、最初は相手も足下でボールをキープしてくるが、最後になると上背を生かして中盤を省略したロングボールを多用してくる。特にヨーロッパでは190cm近いセンターFWを揃えている国が多い。そういう相手と真剣勝負をする時、勝点3を賭けて戦う時、日本の選手は90分間持ちこたえることができない。(後略)


 この後一応ブラジルの例を引き合いに出して、その差は埋められるものだとフォローしていたけれど、最初からこんなハンディが有ったのだという自論を、私は全て肯定できない。


 今回の代表23人は、決して皆身体能力が高い選手達ではない。例えば宮本や、(大会前に帰国してしまったが)田中誠等はカバーリングやコーチングに秀でた選手であるし、柳沢、玉田、大黒といったFW陣も一瞬のスピードが持ち味の選手で、相手DFを背にしてゴリゴリと前線を押し上げていくタイプではない。そんな選手をチョイスしておいて身体能力の差を嘆くのはお門違いではないのか。

 もし相手と競り勝つDFを欲していたなら、頭を下げても松田を呼ぶべきだったし、それがイヤなら闘莉王を育ててもよかった。単に1対1に勝つ事のみを基準にすれば、もっと沢山の選手がいた。若手からベテランまで、私の稚拙な知識でも少なくとも5人は言える。FWはもう少し苦しくはなるが、そろえられない事も無い。


 しかしそんな選手を選んでも、日本サッカーの持ち味が消えてしまうだけという判断があったからこそ、ジーコはあの23人を選んだのではないのか?上背が無くても(勿論あるにこしたことはないけれど)サッカーは出来るのだと考えていたのではないのか?それを今際の際になって話題に出すのは、いくらなんでも利己的だ。

 本当はお疲れ様の一言も書きたかった。この4年間でジーコは明らかに疲弊していたし、アジアカップ連覇、3大会連続ワールドカップ出場の功績は、間違いなく日本サッカー史に残る偉業であるから。でも、今はそんな気も失せてしまった。さよならジーコ。さようなら神様。


 

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