9/18/2005

C大阪2VS0磐田 鋼鉄の処女竜脈を断つ。

 本当にびっくりした。娘の『魔力』は本物だ。5年間も勝てなかった相手に2-0の完勝。チームは3連勝。残留争いから脱するとともに上位を窺う位置にまで上って来た。270分間無失点という事実を、それ以外にどう結論付けられよう。


 あえてロジカルに、そして簡潔に勝敗の分かれ目を語るのであれば、両チームの相手ボールを防ぎとめる力、自分のボールを前に進める力が勝敗に直結したように感じる。

 セレッソのスタメンは「定番」メンバー。GK吉田。3バックは右から前田、ブルーノ、柳本。その前に右から久藤、ファビーニョ、下村、ゼ・カルロス。トップ下に森島、古橋。1トップに西澤。

 対する磐田はGK川口。DFは3バックで大井、田中誠、金珍圭。MFはボランチに服部と故障明けの名波、右に太田、左に村井、トップ下に船谷。2トップはカレンと前田。


 試合開始から攻めの形を作ったのは磐田。故障明けの名波を底に若い前線がセレッソDFをかき回す。

 この時かろうじて破綻(失点)しなかったのはトップ下の森島、古橋、時には西澤までもが相手ボールホルダーに強いプレッシャーをかけた事と、ボランチのファビーニョ、下村がクレバーでありながらアグレッシブなプレーを続けたため。

 特にボランチの二人は出色の出来。連携、個としての強さ、玉離れの早さ、何もかもがハイレベルだった。そしてそのプレーが90分間続いた。それが流れを変え、それを普遍のものとする原因にもなった。


 攻撃に有っては西澤、ゼ・カルロスが良かったように思う。良く観ていると判るのだが、セレッソの連携は大雑把にいって二つのルートが有る。ファビーニョ、ブルーノからゼ・カルロスに入って左サイドから崩すスピーディな「ブラジルライン」と、久藤から始まって森島に入り、西澤との絡みで右サイドを崩す手数をかける「ベテランライン」。

 セレッソの攻撃が空回りする時は、この二つのラインのどちらかが押さえこまれ、もう一方に偏りがちになるのだが、今日はこの二つのバランスがとれていた。さらに古橋、下村、ファビーニョら「変換機」を介してラインがスイッチするシーンも有った。


 対する磐田は怪我人が多い上、キーマン名波の調子が傍目にも悪かった。パスは出るのだがそこからもう一度攻撃に絡んだりという動きが少なく、前田、カレン等はそれをカバーするのに苦労していたように映った。あくまで個人の穿った見方ではあるけれど…。

 磐田が若手の奮闘で紡ぎ出した何度かの散発的なチャンスをフイにし、その後セレッソが前線のタメからのこぼれ球をファビーニョが一撃で決めて見せたのは、そうした両チームの躍動感の違いを象徴していたかも知れない。


 先制点を奪ってもチームは至って冷静。相手の焦りを誘い、ボールを確実に奪い、ショートカウンターでゴール前を窺う。前半36分には下村のクロスを西澤が彼以外のFWでは成し得ないような鮮やかさでゴール右隅に流し込み、まんまと追加点を奪って見せた。2-0で折り返し。


 後半はセレッソの守備交代が遅れ(というか流れが良くタイミングを合わせるのが難しかった)磐田がイニシアチブを奪う機会がいくつか有った。

 しかし磐田はここでも決めきれない。折角の決定機も枠を外したり吉田の真正面だったりで、とにかくついていない。このシーンで私は、私の隣にいる『魔女』の存在を確信してしまった。


 さらにセレッソの勝利を決定付けたのは、皮肉なことに敵将の選手交代だった。

 恐らく山本監督は決定力のより強い崔や中山を送り込む事で、今までフイにしてきたチャンスをものにしようと考えていたのだろうと思う。

 しかしスタンドから見ている限り磐田のボトルネックは活力の無かったボランチ、トップ下にあり、前線の若手達はそれをカバーする為に精力的に動いていた。彼らが退き、或いはポジションを下げて後、ベテランFW達には良質なボールが供給される事すら無くなってしまった。


 それから後、歓喜が待っていたのは、その名を冠した磐田では無く、セレッソだった。『ブルーノ・トレイン』は磐田ゴール前まで一直線に延び、ゼ・カルロスは自らのシュートを弾いた川口を称える余裕さえ有った(この辺りは二人の性格によるものも多分にあるのだけれど)。


 このポテンシャルがコンスタントに発揮できるのであれば、もう少し上のポジションを狙えるかもしれない。ただカードの多さ、あまりにも激しい運動量、不安になるポイントも多い。しかし今日だけは、この大勝を喜びたいと思う。




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