11/06/2004

個を取るか、組織を取るか。

 大久保の移籍話の中で感じた事があったのでしばしお付き合いを。

 サッカーの中で「個人技」と「組織」どちらを重要視するかという話はよく聞くことですよね。

 今のレッズの強さを「異質」と書いた事があります。それは磐田や鹿島が組織の中に個をはめ込んでいったことで成功したのに対し、浦和はまず個を主張した上で組織を構築していった印象があったからです。

 ここで欠かせないのはエメルソンの存在です。数字の上でも現時点で23得点の活躍を見せていますが、得点を取ることにのみ全力をかけるノーマルな(例えばラモン・ディアスやファン・ソンホンといった)ストライカーとは違い、ドリブルやフリーランによって強引にスペースを作り、相手ディフェンスを肉体的に疲弊させる、とても強烈な「個」の持ち主です。

 それゆえ昨年までのレッズはあまりにもエメルソンに依存したチーム編成になっていました。それはつまりエメルソンの好不調がそのままチーム成績に直結することに他なりません。

 今年就任したブッフバルト監督とエンゲルスコーチのコンビはレッズを「エメルソンに利用されるチーム」から「エメルソンを利用するチーム」へと変化させる事に成功しました。

 三都主などの「エメルソンを利用できるレベル」の選手の補強と、闘莉王、ネネ、アルパイなど強力なDF陣の編成により、田中、永井、長谷部、鈴木といった選手も引き立つようになりました。このレベルになって初めて、「個人技のチーム」と呼べるのかも知れません。


 好対照な位置にジェフやガンバといったチームが有るでしょう。ジェフとガンバをひとくくりにするのは強引ですが、組織の中に個をはめ込むことで、埋没していた個を引き出すという手法は似ています。監督の人気が正反対なのは面白いところですが。


 こう考えてみると、例え個人を先に立てても、また組織を重視しても、結局はこの二つの要素がバランス良く存在しないと、強いチームにはなれないという事が改めて認識されます。そしてセレッソが好不調の波が激しいチームなのは、長年ファン・ソンホン、ユン・ジョンファン、ノ・ジュンユン、西澤、森島、西谷、マルキーニョスそして大久保といった強烈な個に依存したチーム編成を続けた為だということに気がつきます。


 柏とセレッソの勝ち点差は3、数字上はまだまだ絶望するには早い点差ですが、多くのセレッソサポーターが悲観的になっています、それは直接対決をした中で、実際の差以上に組織としてのチームの成熟度に開きを感じたからではないでしょうか。


 仮にセレッソが今年残留したとしても、こうした個のみに依存したチーム体質が払拭されない限り、いずれまた残留争いに巻き込まれる可能性が有ります。

 それを回避する為には、強いリーダーシップを持つ指導者、それをバックアップするフロント、そして彼らの指導に応える事ができる選手をそろえる事が必要なのです。

 言うは易し行なうは難し。一筋縄ではいかない事はわかっています。しかしこれを避けていては、問題は解決しないのです。

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